月別アーカイブ: 2012年12月

タンナーというお仕事4 価格の差が生まれるわけ

これまで、皮が革へと加工される過程を紹介してきました。

さて、各工程に、数種類の方法があるのもご紹介しましたが
何より、価格の差が生まれる原因となる、

        【革の違い】について迫っていきましょうか。

革張りソファに用いられる革で、多く流通しているものに
【コレクテッドレザー】があります。

これは、皮の表面をサンドペーパーで削ってしまい、
顔料で塗装して、その上から、皮の型押しを施しているものです。

皮の表面の事を、Grain(グレイン)といい、
日本ではその部分を銀面とも言います。

グレインをギンと聞き間違え、
ギン=銀の面 銀面と言われるようになったそうです。

皮の表面 グレイン(銀面)は、丈夫な部分です。
では、なぜ銀面を削り取ってしまうのでしょう?

それは、皮の表面には、動物ですからその個体によって
キズやシワ、シミなどがあります。

よっぽど良い状態の皮でないと、良い仕上がりには見えません。
ですから、程度の低い皮は、銀面を削りとり、
コーティングになる顔料により塗装して、皮の型押しをして表面を均一化し
キレイな革にしあげるのです。キレイにお化粧された革、というわけ。

・・・しかし、こう聞くと本当に良い革とは?

やっぱり、皮の丈夫な部分、銀面は残しておきたい。
これを銀を取ってしまったコレクテットレザーに対し、【銀付きレザー】といいます。

そして、なるべく薄い塗装もしくは、染料で染めるアニリン仕上げの方が 皮の風合いや、素材感が生きていて、良いと思いませんか?

そのためには、皮の時点で差が出ますね。
キレイで状態の良い皮を薄化粧で仕上げてあげる、
そんな方法でできた革が、良い革ではないでしょうか。

もちろん、使う状況によって
特に、染料で仕上げるアニリン仕上げでは、お手入れが大変な部分もあります。
好みもありますから、いちがいにアニリンが一番!という事は言えませんが

風合いや、お手入れの事を考えつつ
   アニリン仕上げ
   セミアニリン仕上げ
   ピグメント仕上げ・・・という視点から、革を見つめてみてください。

そして、銀面が削りとられたコレクテットレザー、

さらに安価なものでは、
銀床(皮を銀面とその下の部分に割り、銀面じゃないほうの床皮)に
フィルムを貼り付け塗装・型押ししたもの
  リサイクルレザーやバイキャストレザーと呼ばれるものもあります。

中には、皮の破片を樹脂で固めて皮状にしたものもあります。

ひとまとめに【革】といっても、実に色々種類があるわけです。

さぁ、革張りソファといわれているソファに、価格の差が生まれるわけを
お分かりいただけたでしょうか。

タンナーというお仕事3 染色と塗装

なめされた皮は、下染めされます。

このときに使われるのは、水溶性の染料。

ちょうど、白いシャツを、色のついたモノと一緒にお洗濯したら
染まっちゃった! そんなイメージです。

水に溶ける染料が、皮の組織に染み込んで色がつきます。

そして、乾かした後、塗装されます。
この塗装にも2種類の方法があります。

1)顔料仕上げ(ピグメント仕上げ)
皮の上に、塗装スプレーで塗装するイメージです。
表面が塗料に覆われますので、日焼けによる色落ちしにくく、汚れ辛いので
お手入れがしやすい、塗装方法です。

もちろん、この塗装にも、厚塗り、薄塗りがあります。
お化粧を想像してみてください。

薄塗りのほうが、ナチュラルで素材感が楽しめますが
もともとの皮の状態が良くないと、キズやシミなどが見えてしまいますね。

厚塗りは、色もキメも均一に見え、キレイに見えますが、
若干素材感は、薄れます。

2)染料仕上げ(アニリン仕上げ)
皮に、色が染み込むイメージです。
皮の表面がそのまま生かされ、透明感のある仕上がりとなります。

でも、表面に塗膜が無いので、色落ち、色あせ、シミなどもおきやすいので
お手入れは、難しいです。

でも、その皮のしなやかさや、素材感をそのまま楽しめる仕上げとなります。

1)と2)の間の、セミアニリン仕上げというのがあります。
これは、皮の表面に、顔料で薄い塗膜をつくり、染料でさらに染め上げます。
皮本来の、素材感を楽しみつつ、堅牢性も持ち合わせる
ちょうど、ピグメントとアニリンの中間の仕上がりとなりますが、
その顔料と染料の割合に応じて、仕上がりも異なります。

タンナーというお仕事2 なめしについて

皮の下処理が終わり、毛も抜かれたところで

鞣し(なめし)の工程に入ります。
【なめし】には2種類の方法があるそうです。

1)クロムなめし
クロムという青色の金属鞣剤を使用します。
丈夫でやわらかく、耐熱性に富んだ革になります。
このクロムなめしの革が、もっとも流通しているそうです。

2)植物タンニンなめし
引き裂きや、耐熱性はクロムなめしには及ばないものの
硬くて、厚い革になります。

日本では、ヌメと呼ばれるのも、この植物タンニンなめし。
ヴィトンのバッグの、あのベージュ取っ手のところ、
といえばおわかりになるでしょうか?

使ううちに、あめ色になり艶が出てくるのも魅力の一つですが
水や油によるシミには、充分気をつけなくてはならないのも、このヌメ。

ナチュラルレザーと呼ばれる事もあり、バッグやベルト、くつなどに用いられます。

そもそも、【なめし】とは動物の皮の防腐処理。
なめし剤は、皮に含まれるたんぱく質と結合し、腐らなくなり、
耐熱性も付与されます。

タンナーというお仕事1

こんにちは。

先日、TERRAにタンナーさんが来社されました。
タンナーさん、とはどんなお仕事の方でしょうか?

生活の中で、靴(くつ)や鞄(カバン)に使われる素材。

私達が扱う家具の中でも、欠かせない材料、革(かわ)。

その、革とは本来は動物の皮。
これが革になるまでのお仕事をされているのが、タンナーという職業なんですね。

社員がタンナーさんから
知っているようで、知らなかった「皮」から「革」へのお話を
直接聞く機会が設けられ、とても、楽しくも、ためになる時間を過ごしました。

そこで、今回は「皮」から「革」となるまでの工程や
革でも、どうしてこんなに価格が違うのだろう・・・という疑問まで
ご紹介したいと思います。

【皮】 
皮は、動物のお肉をいただいた後に残る副産物。
こちらを、いただいて革の材料としています。

タンナーさんが、
  「動物のお肉をいただいたあとに、皮もいただくのです。
                                                                 究極のエコ商品です。」
とおっしゃったのが、心に残ります。

【下処理】
皮を洗います。大きな大きなドラム(洗濯機のようなもの)で、
ぐるんぐるん、と洗うそうです。

そして、毛を抜きます。

【鞣し(なめし)】
防腐処理です。そして耐熱性も備えるそうです。

【染色】
下染めの段階です。水溶性の染料となめし終わった皮を
一緒にドラムにいれて染めます。

【乾燥】
しっかり干します。

【塗装】
下地の色がついている皮に、塗料で塗装していきます。

これで、皮は革となりました。

次回は、この工程の中を、こまかく見ていきましょう。

協力:来社されたタンナーさん Kawazen
Kawazen HP