「世界から見る北海道の暮らしと住まい」五十嵐淳講演会

昨日に引き続き、北海道 暮らしから育てるインテリアキャンペーン2015から特別講演会のレポートです。
建築家五十嵐淳氏による特別講演「世界から見る北海道の暮らしと住まい」です。
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彼の建築の、根本的なところにある問題意識は、気候や、文化や風習は、世界中でさまざまなのに、近代建築はどれも似たようなものばかりなのはどうしてだろう?という事でした。

確かに、世界中に色々な文化を持つ、色々な民族が暮らしているのに、発展した都会の写真は、どの国も見分けがつかないようなビルディングが、立ち並ぶ風景です。

そこで、五十嵐氏は、日本の昔ながらの神社仏閣建築や、古民家を研究し、エクステリアとインテリアの中間に位置する半屋外空間「中間領域」を、意識して設計を始めました。

この、中間領域=縁側の存在です。
氏は「バッファー buffer」(緩衝材の意)と呼んでいました。

北海道で生まれ育った、その経験も建築に反映されているようです。
寒い北海道の住宅の玄関の外に、後付されたような風除室。
これも、バッファーとしてとらえ、さらに建築物に取り込む過程で、このいわゆる[カッコワルサ]を否定していきます。

外と内とをつなぐスペースという意味合いだけではなく、光のコントロール、空気の層としてのとらえ方をし、建物全体の主要なエレメントとして、取り上げた設計をしているように見えます。

それは、いわゆる「縁側」の延長ではなく、壁や天井すらを、建築物内のレイヤーとしてとらえて、設計されていきます。

そして、次のキーワードは、光の拡散。
これの元をたどると、障子の存在にたどり着きます。。
直射日光を入れず、反射光、拡散光を室内に取り入れる様々な手法。
それには、バッファーを利用したり、間仕切りとして吊るしたレースカーテンであったり。
氏の作った、建築の内々部には、やさしく均等な光が降り注いでいます。

ひとつひとつのエレメントは、独立した役割だけでなく干渉しあっているようです。

北海道での建築では、無視することができない「凍結深度」もそう。基礎を打つのに、北海道の寒冷な気候では、地面も凍る深度がある。それ以上の深さに基礎を打たなくてはならないのだけれど、その深度までの空間さえ、建築に取り入れていきました。

紹介される彼の作品=同じコンセプトの建築物の量が多すぎ、写真が小さく、スライドの展開が速くてよく見えず、多少残念ではありました。
もう少し、特徴のある建築を抜粋して、一つ一つの建築に対し、細かくゆっくりご説明いただけた方が、さらに興味深く、聞くことができたのではないかと思いました。

でも、確かに氏は、講演の初めにこう言いました。
「起承転結で話しては行かない。時系列で説明しないとプロセスや思考を辿れない。」と。

氏の中では、一つ一つの建築は、時間の帯の上に順序良く並び、それだからこその、彼の設計のプロセスがあったのだと思います。

ふってわいたアイディアや、直観的感性によるデザイン性ではなく、環境=状態と向き合い数値を出し、導き出された結果の建築。
大変、分析的で数学的です。
彼の、性格と言うか生きざまと言うかが垣間見られた、講演会であり、彼の建築だと感じました。

2015/05/15 by 札幌ファニシング TERRA staff