飛騨の匠の物語2

かにかくに 物は思はず 飛騨人の 打つ墨縄の ただ一道に

この万葉の歌は、飛騨の匠たちが打つ墨縄の直線は
人間の技とは思えないほど、高度で正確な技術であることを
あらわしている歌である。

あれこれと浮気はしない。飛騨人の打つ墨縄が真っ直ぐなように
ただ一筋の愛を貫き通す、そんな恋の歌・・・なのですが。

都造営から近世の匠建築まで、
国の重要文化財に指定されているものは数多く
現在でも、その技にふれることができる。

国重要文化財 日下部家梁組

豪壮でどっしりとした表構え。
軒裏にセガイ(出し梁)を施し軒はかなり深い。
男性的な力強さを感じさせられる。

一方、日下部家の隣家である吉島家
セガイは無いが、太い軒下駄や垂木が
優雅で洗練された美しさを魅せる。

内部を見ると吹き抜け空間が美しい。
根曲がりが大きいアカマツ材を使いこなし
束と梁が織りなす縦と横の木材構成美。

一本の木材でも、繊維方向が平行でなかったり、収縮率が違う。
また、樹種、伐採された場所によっても、特質が違ってくる。

そんな材の欠点と利点を組み合わせる工夫が随所になされる。
木を知り尽くした、匠だからできる高度な技術だ。

飛騨の街を歩くと、飛騨の匠の技に魅せられる。

よく目にする、格子デザインも、その特徴の一つ。

ここで、一つ、不思議な格子をご紹介しよう。

お気づきだろうか。
木組みが縦も横も交互にかみあわされ
まるで、竹かごのよう。

竹や針金など、たわむ材料では可能なこの組み方は、木では不可能である。

それを可能にするのが、飛騨の匠の技というわけ。

安土桃山時代に建てられた寺の余材で、小さな地蔵堂を建てた棟梁。
この謎の千鳥格子は、このお堂の扉として考えられた。
檜の一寸角を使った升目で互い違いに組んだ謎の格子。

人々はこの格子組みに首をかしげたまま約250年が経過した。

明治初期に、高山の名工岡田甚兵衛がその組み方を解き明かそうと調べたが
外見からでは全くわからなかった。

やむなく、扉の片隅を少し壊して、その秘法を盗んだという。

※写真は、謎を解いた名工、岡田甚兵衛がその格子を再現した
高山市の江名子川に架かる助六橋の近くにある現存の稲荷堂。

あえて、ここではその秘密はあかしません^^
安土桃山時代の、ある飛騨の匠の技と頭脳に挑戦してみませんか?
                            つづく

参考文献:新・飛騨の匠ものがたり

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2012/02/06 by 札幌ファニシング TERRA staff