今日は、昨日開催されました
エーディコア・ディバイズ家具セミナーの
様子をご報告いたします。
ADコアは、
「一度商品化した製品は廃番にしない」
「大量生産をしない」
「国内で製造する」というコンセプトで
1985年から国内でクオリティの高い家具を作り続けています。
その、ADコアの家具デザイナー瀬戸昇氏を講師にお招きして
製造工程、職人技と機械技の高度な技術を、
実物パーツと映像によって説明していただきました。
今日は、第一回目として、
エーディコアブランドのベストセラー製品の
ARCO-アルコ-の製造工程をご紹介いたします。
アルコは並べて使うと、背と座のおだやかなカーブが波のように続き
スチール脚のシャープさが特徴の、美しい椅子です。
デザイナーの瀬戸氏は、椅子をデザインし、
まず1/5の模型を作成しました。
今まではその後、原寸で三面図※を作成するのですが
最近は、コンピューターで3Dデータをつくります。
※三面図(平面図、正面図、側面図の3方向から見た図面)
コンピューター上で、360度回転させながら、
実際のフォルムを、感じることが出来ます。
技術が進歩し、家具の製作の工程もずいぶん変わってきました。
アルコのボディは、成形合板で美しい三次曲面をしていますが、
その模型は、ケント紙を実際に重ね、型に押し当て接着すると言う
まさに、成形合板の作り方そのもので、作られたそうです。
成形合板は、ロール単板の木目の方向を、90度変えながら
奇数枚重ね、接着して合板をつくります。
木材を、かつらむきの様に薄くし、無駄なく板に出来る
エコな材料ともいえます。
※合板:「木製家具の、なかみ」参照
※「合板の進歩」
※三次曲面の成形合板「二次曲面から三次曲面へ」
表面には、紙のように薄く木材をスライスした「突板」を貼り
美しく仕上げてあります。
接着剤を塗り、型にはめ乾燥させるのですが、
高周波プレスをつかっています。
高周波(振動)で温度をあげ、接着剤を早くかためる方法です。
ここにも、技術の進歩が見られますね。
そして、コンピューターの3Dデータが活躍です。
NCマシンで、デザインどおりに成形合板を切り出していきます。
さらに、布を張り込む際に使う、5㎜の溝を
10㎜ほどの厚さの合板の、木口に削りこんでいきます。
このあと、サンダーで表面をなめらかにし、塗装下地を塗り、更にサンダー。
本塗装も、塗ったり拭き取ったりの何工程も経て、やっと仕上がるのです。
パイプで出来た脚は、通常の1.5倍もの強度がある
ハイテンションパイプを使っています。
強度があるからこそ、その加工も大変です。
機械で曲げたあとは、すべて手作業で微調整していきます。
各脚パーツを溶接し、サンダーをかけ、表面をなめらかにします。
余分な油分が残ると、塗装がのらず、あとからメッキはげの原因になる為
31工程もかけ、十分に洗浄します。
下地にニッケルメッキを2回。そしてやっと、クロムメッキを施します。
本体には、ウレタンを貼り、椅子張り地を張り込みます。
ウレタンは、端の収まりが良くなるように端を手でつまみ、なめらかにします。
張り込みの布はかぶせたあと端を、木口に削り込んだ5㎜の溝に入れ込み、
タッカーで丁寧に止めて、余分な布は手作業でカットします。
仕上げに、パイピンを溝に接着しながら、入れ込んで仕上げます。
脚と、本体を固定し、ようやく一脚の椅子ができあがるのです。
そして、これだけで終わりではありません。
強度実験が行われます。
・繰り返し衝撃試験
後脚を床に固定し、椅子の座に55kgのおもりをのせたまま
前脚を床から50mm持ち上げて落下させる試験です。
4000回落下のところ、アルコは12000回という
過酷な試験をパスしています。
コントラクト(商業施設など)でも、通用する丈夫な椅子である証です。
いかがでしたか?
その細かい工程もさることながら、機械・技術の進歩による
デザイン実現の幅が大きくなったこと。
なのに、職人一人ひとりの匠の技が、いたるところに見られ
本当に丁寧に作られていること。
そんな事が、伝わってくるセミナーでした。
さて、次回はADコア上質ブランドのネオクラシコ人気の
NC-007チェアの製造工程をご紹介いたしますね。